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山吹草太オリジナル作品の紹介




 
名も無き兵士の墓

パリの凱旋門の下には
名も無きひとりの兵士の墓標がある
その場所に静かに佇んで名も無き我を思う
世界中では名も無き詩が
悠久の時を経て読まれ続けている
世界の片隅で暮らす自分自身も
この大地を離れては存在できない
いつの時代も大衆から離れて詩は存在し得ないだろう
だから一本のペンと一枚の紙から世界を創造しようじゃないか。


                         山吹草太

 撮影:PARIS凱旋門

山吹草太の世界を知る言葉の数々を断片的に紹介しています。
インターネットでの作品の公表は著作権や知的財産権の侵害という問題もあります。
しかし、公表された作品とは誰のものか?という考えは作家により千差万別。
より多くの方に読んでいただき、それぞれの中で「自分の言葉」として、
作品が新しい生命を得ることは素晴らしいことです。

◆2005年~2008年までにWEBに掲載された作品群へのリンク。
◆詩・短編・コラム・つぶやき等を気まぐれで掲載しています。

作品の無断使用や転載は著作権上禁止です。
転載や演劇・朗読等に使用する場合は必ずご連絡下さい。
sota_yamabuki@ybb.ne.jp
※社会教育・社会福祉など公益的な目的での使用場合は、
 作品を無償で提供していますので、お問い合せ下さい。


神奈川県川崎市の人気ポータルサイトDegi Tama
2009年度新連載開始「記憶の欠片」



人はこの世に誕生しそれぞれの人生を歩む

喜びや悲しみという記憶の欠片をいつしか拾い集めながら

僕たちは大人になってゆく

ひとりの少年が体験した

つなぎ合わせることの出来ない記憶の欠片とは何か?

儚くそして鮮烈に刻み込まれた「その日」を綴る12編の物語




光と影の記憶「2005年」旅の中で感じたコラム

◆境界の時間
◆冬の巡礼
◆清流礼賛
◆岬の分教場
◆唐人お吉
◆タイ物語「拈華微笑1」
◆タイ物語「拈華微笑2」
◆僕のいない街
◆保健室の午後
◆紙芝居
◆アウトローという生き方
◆見えない敵



少し壊れた物語「2006年」短編物語集

なかもとみゆきひとり芝居や全国の高校&専門学校での上演依頼が多数。

◆水底の街
◆もうひとつの黙示録
◆2匹の犬
◆孤独という名のBAR
◆桜と絵描き
◆フランスパンを買いに
◆二人
◆横断歩道
◆岐路
◆駐車場係の誤算
◆天使の羽根
◆砂時計



虹色の種「2007年」連載物語12編

なかもとみゆきひとり芝居や朗読教室の教本として使用されている。

◆虹色の種1「旅立ちの少女」
◆虹色の種2「見えない現実」
◆虹色の種3「橋の上の少年」
◆虹色の種4「老婆の嘆き」
◆虹色の種5「奪い合う者たち」
◆虹色の種6「心のゴミ箱」
◆虹色の種7「真実の愛」
◆虹色の種8「さすらう民」
◆虹色の種9「戦争の準備」
◆虹色にの種10「王のいない城」
◆虹色の種11「橋の上の少年との再会」
◆虹色の種12「希望の大地」



Lost Generation「2008年」山吹草太断想集(語録)

◆Lost Generation1
◆Lost Generation2
◆Lost Generation3
◆Lost Generation4
◆Lost Generation5
◆Lost Generation6
◆Lost Generation7
◆Lost Generation8
◆Lost Generation9
◆Lost Generation10
◆Lost Generation11
◆Lost Generation12




日刊ブログ新聞ぶらっと!「2007年~現在まで」WEBブログ

日刊ブログ新聞ぶらっと!の奈良県地域ライターとして寄稿した200本以上の記事が読めます。

◆山吹草太ブログ記事




WEB詩人ではないので気まぐれ更新です。





旅立つ祖母の詩

99歳で祖母は死んだ
長い旅の果てに
またどこかへ旅立つ
この世からあの世へ
終わることのない旅路の続き

沢山の友を見送った祖母の
その葬儀に友はいない
全員が世話になった人間ばかり
誰もがありがとうとしか言えない
涙のない別れの時

故郷を遠く離れて暮らす僕も
疎遠になった友と再会して
短い台詞で会話する

故郷は寂れ果て
友も仕事がないと言う
短い台詞に長い沈黙を纏って
過ぎた年月になぜか詫びた

仕事がない友の差し出す香典袋
その心遣いに
ひねくれた僕の心が折れる
仕事もない友の差し出す友情に
詫びる言葉もないまま佇む

99歳で死んだ祖母が
温かな故郷を教えてくれた日
僕は新しい旅の支度をした






冬のモンサンミッシェル


真冬の修道院

天まで伸びたその先端に

聖ミカエルは

剣を振りかざし立っている


冬のモンサンミッシェルには

この世の汚れを覆い隠すような

真っ白な雪が降り

果てしのない干潟の海に解けてゆく


そしてその旅の先端には

僕が立っている

剣も持たずに

ただ立っている


年の時を数えてみるには

人の人生はあまりに短すぎる

旅の始まりでもなく

旅の終わりでもなく

ただ果てしのない干潟が続いている


ムール貝は黙ったまま

今日も寄り添って暮らしているだろうか

それとも旅に焦がれて

海中の死を夢見ているだろうか


冬のモンサンミッシェルに雪が降る

縦でも横でもなく

ただ静かに降っている

天使の涙は雨ではなく雪

孤独に佇む聖ミカエルの山






花売りの少年


アジアの片隅の路上を

僕を乗せたタクシーが走る

赤信号で止まったそのタクシーに

にこども達は一斉に駆け寄ってくる

その手には花を持って


後部座席のガラスを叩いて

その少年は花を掲げた

やけに黒くて大きな瞳に

僕は思わず顔を背ける

閉じたままのガラス越しに

少年は「花を買って」と叫んでいる

いや多分そうだと思うだけで

言葉はまるで分からない


やがて信号が青になり

タクシーはまた走り出す

走り出せないあの少年の暮らしを引き摺って

僕は走り出す


いつか神様を信じるかと問われたことがある

その問が頭の中でまた響いた

疾走するタクシーの窓越しに焼き付いた

あの少年の黒くて大きな瞳

悲しく微笑んだ口元に詫びながら

「神様は留守なのだと」呟いた


タクシーを降りて

行くあてもなく市場の雑踏の中を歩いた

色とりどりの美しいシルクの服が

風に吹かれて揺れていた

僕はこのアジアの片隅に

どこかへ出掛けてしまった神様を探していた


あの少年から花を買えば

僕はあの少年を忘れてしまったかも知れない

かりそめの施しでその場をつくろうより

痛みを抱えた友のために

そのことを伝えるひとりになりたかった


いつの日かあの少年に会いに行きたい


売り物ではない


花を抱えて






いのちの作法


たとえば私が

誰かと違っていたとしても

愛してくれるあなたがいる幸せ


たとえばあなたが

誰かと違っていたとしても

愛することが出来る私の幸せ


年老いた母は

もう箸さえ自分で持てない

私に「ごめんね」と言って遠くを見ている

私は母の口元にお粥をはこぶ

いつだったか

あなたが私にそうしてくれたように


年老いた父は

もうひとりでは立ち上がれない

私に「ありがとう」と呟いて頭をさげた

私は父の細くなった腕を抱える

幼い日に

あなたが私にそうしてくれたように


たとえば私が

ひとりぼっちで泣いているときも

励ましてくれるあなたがいる幸せ


たとえばあなたが

私を忘れてしまったとしても

あなたを覚えている私の幸せ


あなたは少しだけ弱く生まれてきたけれど

あなたが生まれた日

私はどんなに嬉しかっただろう

家族も友人もみんなが笑っていたあの日

私が少し弱気になっているとき

無邪気に微笑むあなたこそが私の宝物


あなたの友人として

あなたと共に今日を生きる

私はあなたの手がとても温かいことを知っている

私の手はあなたの手の上に

あなたの手は私の手の上に

心は同じベンチの日だまりの中で遊んでいる


たとえば私が

生きる意味を見失ったときにも

希望に満ちたこの場所がある幸せ

たとえばあなたが

傷ついた心で世間に背を向けても

黙って微笑む家族がいる幸せ


家族も友人も学校も信じられず

希望の光を見失ってしまった私に

あなたは「いつでも帰っておいで」と言ってくれた

あなたのいる小さな村の夏

水辺で笑いあった大切な仲間たち

もうひとつの家族が教えてくれた「ありがとう」という言葉


心を閉ざしたまま迎える食卓

精一杯の愛情が大きなお皿に盛られる頃

私はご飯を食べながら泣いた

何故か心の中の鎖がほどけていって

泪がテーブルの上に落ちた

温かな食卓が教えてくれたのは「ごめんなさい」という言葉


生きることに作法があるなら

私とあなたは同じということ


生きることに作法があるなら

どんな命もすべて愛おしいということ


あなたがいて

わたしがいて

共に生きること


それがいのちの作法






雨の日の午後


紫陽花の花も落ちてしまった

雨の日の午後

今にも死にそうな子猫を見ていた


もう彼には何も見えない

目やにだらけで塞がれてしまった瞼

頼りなく震える細い首に

少し大きめに見える頭がゆれている


生命の終り


何処にも親猫の姿は無い

ただ静かに大粒の雨が

風も無い午後の地上に降っている


その体にタオルを掛け

濡れた頭を撫でてやると

彼は震えながら立ち上がろうとした


いま生命が消えるその時に

子猫は己の足で立ち上がるのだ

猫が人の子を超える瞬間を見た


人の子はこの子猫ほどに強くない


人の子の僕には出勤時間が迫っていた

僕は立ち上がり歩き出す

生命の無い世界の果てに


そして思っていた

彼が天国で何処までも続く野原を駆け回る姿を


そして僕は雨の中を

振り向かずに歩いた





波打ち際


空はどこまでも青く

人生の波打ち際には

美しい白い貝殻と

屍が転がっている


あれは君の亡骸かい

多分違うね

それじゃあ僕の亡骸かい

多分それも違うはず


あれは君の白い骨かい

多分違うね

それじゃあ僕の白い骨かい

多分それも違うはず


あれは貝殻だよ

そうだあれは貝殻だ


誰かに漂白された

白い貝殻だ


亡骸は誰のかな

あれはね全員のだよ


全員の亡骸なんだね

そうだあれは打ち捨てられた夢


でも空は今日も青いね

そうさ真っ青だ


僕たち死んでいるのかな

そんなことにいま気がついたのかい